2025/12/31
ラグズワークスの原点——「表現すること」
ブログ
ラグズワークスの出発点をひと言で表すなら、それは「表現すること」です。
ずっと昔、人類がまだ文明と呼べるものを持っていなかったころから、人はすでに「自分の内側」を外に出そうとしてきました。
歌うこと。
踊ること。
壁や岩に絵を残すこと。
文字も印刷もカメラもない時代に、人はこの3つで、祈りや願い、喜びや恐れ、誰かへのメッセージを伝えようとしてきました。
子どもの頃の僕は、自然とこの「古代人の三つの表現方法」に惹かれていました。
合唱団で声を揃えて歌うこと。劇団でセリフを覚えて舞台に立つこと。鉛筆一本で風景を黙々と描き込むこと。テレビのダンス大会のオーディションに挑戦してみること。
そのあと歌手として本気で活動していた時期もありましたが、ふり返ってみると、あの頃の僕はただひたすら、
目の前にないものを、「そこに在る」ように見せること
を試していたのだと思います。
ファミコンではなく MSX を選んだ子ども時代
少し僕の子ども時代の話をします。
まわりの友達がファミコンに夢中になっていたころ、僕はひとりだけ MSX というパソコンに向かっていました。本に載っている BASIC のコードを、ひたすらそのまま打ち込んでいく。カチカチとキーを叩いて、エンターキーを押した瞬間、画面の中のキャラクターや図形が動き出す。
あのときの「うわ、動いた」という感覚は、初めて自分の歌声が人前で響いたときや、描いた絵を褒めてもらえたときの感覚と、とてもよく似ていました。
歌もダンスも絵も、そしてプログラムも。
全部「目に見えないものを、見える形にする」ための方法です。
当時はそんなに深く考えていたわけではありません。でも今ふり返ると、アナログな表現とデジタルな表現の両方に、同じ種類の「気持ちよさ」を見つけていたんだと思います。
アナログとデジタルが同じ線の上にある
今、ラグズワークスとして仕事をしている時代に話を戻します。
世の中には、便利なデジタルツールがあふれています。
グラフィックも映像もウェブサイトも、最終的な納品物はほとんどデジタルデータです。印刷物でさえ、入稿までは完全にデジタルのワークフローで進んでいきます。
それでも、僕の中の感覚は子どもの頃とあまり変わっていません。
紙と鉛筆でラフスケッチを描く時間が好きですし、手の感覚でバランスを探る行為も、今でも大事な作業のひとつです。一方で、画面の中でレイヤーを重ね、タイムラインをいじり、コードを書いて動きをつける作業も、MSX の画面を動かしていたあの頃の延長線上にあります。
アナログとデジタル。
どちらが正しいという話ではなくて、どちらも「表現のための道具」です。
鉛筆で一本の線を引くことも、ペンタブレットで一筆描くことも。
譜面を見ながら歌うことも、モーショングラフィックスを組み立てることも。
僕の中では、全部が一本の線の上でつながっています。
「何を伝えたいのか」から始めるデザイン
ラグズワークスの仕事の多くは、デジタルデータとしてお客様にお渡しするものです。ロゴ、チラシ、サイネージ用の映像、ウェブサイトのデザイン…。ほとんどが最終的には「ファイル」としてメールやストレージ経由で届けられます。
ただ、その一歩手前で、必ずやっていることがあります。
この人は、本当は何を伝えたいんだろう?
と考えることです。
新しく始めるサービスに込めた想い。
長く続けてきた仕事への誇り。
お客様に対する感謝の気持ち。
自分の言葉ではうまく言えないけれど、ちゃんと届けたいニュアンス。
こうしたものは、Photoshop や Illustrator のメニューの中には出てきません。BASIC の命令文みたいに、短いコードで書き下せるものでもありません。
だからこそ、打ち合わせ中の何気ない一言や、雑談の中の表情、過去に作られた名刺、オフィスや店舗の雰囲気——そういったアナログな「空気」も、僕にとって大事な素材になります。
そのうえで、フォントや色、レイアウト、動き、言葉の選び方を組み合わせていく。そのプロセスは、歌やダンスや絵で自分を表現しようとしていた頃と、本質的にはあまり変わっていません。
お客様とエンドクライアントをつなぐ「橋」として
ラグズワークスは、これからもアナログとデジタルの両方の良さを活かしながら、「ちゃんと届く表現」をつくっていきたいと考えています。
紙のざらっとした質感だからこそ伝わる温度もあれば、ディスプレイの中だからこそ出せるスピード感やインパクトもあります。静止画だから届く余韻もあれば、動画だから生まれる高揚感もあります。
その全部を、これまでの経験——
- 古代の表現にどこかで憧れていた子ども時代の感覚
- 歌い、踊り、描き、コードを書いてきた時間
- そして今も続いている、日々の制作と仕事
それらを少しずつ混ぜ合わせながら、一つひとつの案件に込めていきます。
お客様の想いを、ただ「それっぽく」まとめるのではなく、
エンドクライアントの心に、きちんと届く形にすること。
ラグズワークスは、そのための「橋」のような存在でありたいと思っています。
アナログとデジタルが共存するこの時代の中で、
両方の良さを最大限に活かしながら、
いいものを、ちゃんと伝わる形で届ける。
そのための表現を、これからも静かに、しっかり追求していきます。
(著者:前田健二)