2026/09/11

自分のMacの中に「自分専用のAI」を置く時代 ― オープンウェイトの静かな台頭と、iPhone Duoが描いた未来図

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自分のMacの中に「自分専用のAI」を置く時代 ― オープンウェイトの静かな台頭と、iPhone Duoが描いた未来図

「事務作業はAIに置き換わる」と言われた一年

昨年来、AIエージェントの普及や、Coworkのような「AIに仕事の流れごと任せる」ツールの登場で、RPAに代わるAIによる事務の自動化が盛んにうたわれてきた。2026年度中には、入力作業のような決まりきった仕事は、そのままAIエージェントに置き換わるのではないか――そう言われていた。

そこへ来て、この夏の大きな変化がある。アメリカ企業が席巻していたAIの世界で、中国企業のAIが一気に台頭してきたのだ。動画生成のSeedanceや、大規模言語モデルのKimi K3などは、一時的にアメリカ勢を抑え、頭ひとつ抜けたクオリティを見せはじめた。もちろんアメリカ側も負けてはいない。GoogleのVeoは、目を疑うほど質の高い動画を平然と生成してくる。

派手な生成AI、さらに賢くなるエージェント。その陰で、静かに、しかし確実に進んでいる流れがある。AIのオープンウェイト化だ。

クレジットと、データの行き先

先ほどの「業務をAIに置き換える」話に戻ろう。やり方自体は、すでに現実的になっている。AIエージェントに「スキル」と呼ばれる作業手順ファイルを用意しておき、Computer Useと呼ばれる機能でブラウザを操作させれば、ほとんどの定型作業は代替できる。

ただ、気になる点が2つある。

1つは、エージェントを走らせている間、クレジット(利用料)を消費し続けること。 もう1つは、AIチャットやエージェントに書き込んだ内容が、「プライベートモードだから学習には使われない」と言われても、提供元の企業のサーバには渡ってしまうこと。

オープンウェイトとは何か

この懸念に応えるかのように、この夏あたりからAIベンダー各社が、最新モデルの「オープンウェイト」を相次いで公開しはじめた。

オープンウェイトとは、AIが判断に使う「重み」のファイルそのものを、無料または有料で公開すること。これを手元のマシンに置けば、外部と一切通信せずに、パソコンの中に自分専用のAIを持てる。

重みファイルの規模はモデルによって幅があり、数十億(数B)パラメータの軽量なものから、大きなものでは一兆(1T)規模のものまである。軽量モデルであれば、Macの上位機種が積んでいるユニファイドメモリで、すぐに動かせる。8月に発表された新しいMac Studioには最大512GBのメモリ構成も用意されており、かなり大きなモデルまで視野に入る。

「外に一切漏らさず、簡単な処理は自分のMacだけで完結させる」。これはもう、実現している話だ。

一方で、より優秀な大規模モデルを置きたいとなると、個人のPCでは足りず、GPUをたくさん積んだハイスペックマシンが必要になる。大手企業は、AIが世に出はじめた頃から自前のモデルを作ってきたし、今も稼働させ、パラメータも独自に育てているはずだ。周りを見渡しても、会社から「AIを勉強しろ」と言われた人たちがデータサイエンスを学び、高校数学から思い出そうとしている姿もある。

中小企業がぶつかる2つの壁

ところが、中小企業が同じことをしようとすると、2つの壁にぶつかる。

1つ目の壁:サブスクリプションとして使う場合。 AIエージェントの利用料は積み上がると高くつく。しかも社内にリテラシーを持った人がおらず、どう扱えばいいのか分からない。

2つ目の壁:オープンウェイトを社内に置く場合。 ハイスペックマシンを社内に置く必要があり、その購入費用が計上できない。さらに、置いて終わりではない。オープンウェイトのモデルを自社向けに構築し、新しいモデルが出るたびに更新していく人材が要る。機械だけ買っても、面倒を見る人がいなければ動かない。

ただし、ここに突破口はある。パソコン導入に使えるIT補助金は存在する。制度設計の時点で、ここまでのハイスペック機の導入は想定されていなかったと思うが、うまく使えば道は開ける。

話は変わって、iPhone Duo

ここで話は変わるが、9月10日(日本時間)のAppleイベントで、Apple初の折りたたみiPhone「iPhone Duo」が発表された。

Appleの公開仕様を見ると、これは単なる「折りたためるiPhone」ではない。AIと動画を本気で処理するための構成が、隅々まで盛り込まれている。

  • チップ:A20 Pro。2つのスーパーコアと4つの高効率コアの6コアCPU、Neural Acceleratorsを搭載した7コアGPU、そしてデュアル16コアNeural Engine。ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシングにも対応
  • ディスプレイ:開けば7.6インチ(1,878×2,670、430ppi)、閉じれば5.4インチ(1,398×2,034、460ppi)。どちらもProMotion 120Hz、屋外ピーク輝度3,000ニト。インナーディスプレイには映り込みを抑えるNano-texture仕上げ
  • 本体:開いた時の厚さ5.2mm、閉じた時11.3mm、重さ254g。チタニウム筐体、Ceramic Shield 2
  • カメラ:48MP Dual Fusion(メイン+超広角)。4K ドルビービジョンを最大120fpsで撮影。デュアルキャプチャ、Duo Preview
  • バッテリー:iPhone初のデュアルバッテリー。ビデオ再生はアウター使用時で最大44時間、インナー使用時で最大31時間。有線なら約20分で50%充電
  • 通信:Apple C2モデム、N1チップによるWi-Fi 7、Bluetooth 6。eSIM専用
  • 認証:サイドボタン内蔵のTouch ID
  • Apple Pencil(USB-C)対応(年内に提供予定)
  • 容量:256GB/512GB/1TB/2TB

今回のイベントにiPadは登場しなかったが、以前から発表されているiPadは、専用キーボードを取り付けてMacBook Proに迫ろうとしてきた経緯がある。そこにiPhone Duoが加わると、絵が一枚につながる。

電車の中では、折りたたみのiPhoneを開き、Apple Pencilで手描きする。カフェに着けば、キーボードを付けたiPadでMac並みの作業をこなす。家に帰れば、Mac Studioが動画や3Dをガンガン処理している。その作業中のあなたを、Apple Watchの光学式心拍センサーが見守っている。

シチュエーションに合わせてApple製品をシームレスに使い分ける。デバイスごとに役割が分かれ、しかもすべてが一本のストーリーとしてつながっている。これが時代を先取りしたAppleの布石だと思うし、理にかなった物語ができあがっていることに、素直に凄いと感じた。

ただ、驚くべきところは、結局のところ財布の話に戻る。ストレージもGPUも、たくさん積んだ方がいい。積むほどお金は嵩む。悩ましいところである。


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